● 時間結晶とは何?
2023.01.07
【時間結晶とは何?】
時間に周期的なパターンをもつ Time Crystal (時間結晶)。
時間結晶という物質の生成に 2016年に米国の2つのグループが成功したという。
まず結晶とは「連続的な空間の対称性を自発的に破る物質」として定義します。
では時間結晶とは「時間に周期的なパターンをもつ物質」のことを指し、
決して時間自体が結晶化した物質のことではありません。
時間結晶とは何?
庶民の感覚としては空間と時間は全くの別物ですが、数学的には空間も時間軸も
座標の軸の一部に過ぎず、3次元空間と時間を合わせて「4次元時空」という
言い方もします。
空間と同様に、時間軸でも対称性を自発的に破る事が起こり得るのだろうか
そんな新たな物質を夢見て理論的に追求したのがマサチューセッツ工科大学(MIT)
の物理学者でノーベル賞受賞者でもあるフランク・ウィルチェックという人です
ウィルチェックは2012年、通常の結晶が空間的に周期的であるように、
平衡状態・最低エネルギー状態にある物質が、時間的に周期的である仮説構造を
もつという時間結晶の構想を発表しました。
時間結晶は粒子の規則的配列が三次元空間だけでなく時間方向にも広がっている
という四次元の結晶構造を指します。
またノーマン・ヤオは、時間結晶のふるまいをゼリーの振動にたとえて
わかりやすく説明しています。
「あなたがゼリーを揺さぶったとき、それが予想する揺れとは違う反応を示した
とすれば、すごくおかしなことだと思いませんか?」
「それが時間結晶の真髄とも呼べるものなのです。」
「これは物質の新しい形態であり、そして非平衡物質の最初の例となった
じつに素晴らしい実験です。
半世紀もの間、われわれは金属や絶縁体のような平衡物質を探求してきました。
われわれは現在、非平衡物質という全く新しい分野を模索し始めているのです」
と述べています。
ゼリーを揺さぶると?
【時間結晶の作成に成功】
2016年10月4日にメリーランド大学のクリス・モンロー教授が率いる研究チーム
が世界で初めて時間結晶の作成に成功しました。
時間結晶を作成するための基本工程はとても単純でイオン群のような量子系を
リング状に作成し、エネルギーの状態が最も低くなるまで冷却するというもの。
すると、物理法則的にはリングが完全に静止することになります。
三次元空間での結晶化とは、ある物質の分子系から熱を取り去って低エネルギー
状態にしたときに起こる連続的な空間対称性の破れを意味する。
物質中の全方向に対して対称的だった構造が、低温に置かれることで壊れ、
離散的対称性(ある特定方向だけに対称となること)が現れる現象が結晶化で
あると説明できる。
時空間結晶とは、この離散的対称性を時間方向にも拡張した構造であり、
結晶にみられる規則的パターンが、空間だけでなく時間的にも周期性をもって
現れることになる。
例えば、摩擦ゼロの状態で永久に円運動を続ける粒子は時間方向に結晶化して
いると見ることができる。
バークレー研究所のチームが提起している時空間結晶では、極低温下での
電界イオントラップと粒子間クーロン斥力を利用することによって、
トラップされたイオンが永久に回転運動し、その構造が時間上で周期的に
再現されるようになる。
このような時空間結晶は、量子エネルギー状態が最低になっているため、
時間的秩序が永久に保たれ、理論的には宇宙のその他の部分がエントロピー増大
による熱平衡状態(熱的死)に達した後にも結晶が持続すると考えられるという。
なお、研究チームは時間結晶の用途として「強力な量子メモリを実現するための
量子情報タスク」などを挙げています。
つまり、この時間結晶の成果は、これまでよりもずっと温度の高い状態で、
安定した量子コンピューターの開発に応用できるといわれており、
これは将来容量の大きなメモリの開発に利用できる日がくるでしょう。
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